アスベストの危険性

耐熱性、電気絶縁性、保温性に優れたアスベスト(石綿)は、その優れた特性を活かし、20世紀に入る頃から、建物の断熱材や防火材、電気絶縁材、機械などの摩擦防止用などに大量に使用されて来ましたが、1970年代に入ると、人体や環境への有害性が問題になりました。

アスベストの繊維1本の細さは、大体髪の毛の5,000分の1程度。
アスベストは天然に産出する綿状・繊維状の岩石で、ギリシア語で「不滅のもの」を意味します。
羽毛のような手触り、絹のような光沢をもちながら、グラスファイバーに匹敵する強さをもち、その軽さとしなやかさとは対照的に、燃えず、薬品に侵されず、熱や電気に対する絶縁性や防音性も高いという、多くの優れた特性をもっています。その上、非常に安価であるため、産業界では「奇跡の鉱物」として重宝され、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用され、現在約3,000種類の製品となって私たちの身のまわりをとりまいています。

しかし、1970年代に入り、空中に飛散した石綿繊維を長期間大量に吸入すると、塵肺、肺線維症、肺癌、悪性中皮腫(ちゅうひしゅ)の誘因となることが指摘されるようになりました。

アスベストは口や鼻から吸入されると、長い繊維(5~100ミクロン)は終末気管支に留まって、そこから気管支壁を突き破って進入し、胸膜下へ移行し蓄積します。そこで食細胞が作用し、数日後には鉄を含むタンパク質によって覆われます。短い繊維は吸入後、喀痰として排出されますが、一部は食細胞にとりこまれ肉芽腫の中心となって周辺に繊維化がみられます。口から摂取されたものは、消化管を貫通して腹膜に到達します。

日本においては、アスベスト含有製品生産や建設作業に携わっていた作業者の健康被害に対する補償が行われてきましたが、2005年にアスベスト含有製品を過去に生産していた工場近辺における住民の健康被害が、それに対する救済措置の不備とともに問題として報道されましたが、現在でも有効な治療法が確立されていないのが事実で、最大の予防策は「吸引しないこと」です。