アスベスト対策が遅れる数々の問題点

人々の健康と、安全な暮らしを脅かす、アスベスト。
アスベスト(石綿)は、20世紀に入る頃から、建物の断熱材や防火材、電気絶縁材、機械などの摩擦防止用などに大量に使用されて来ましたが、1970年代に入ると、人体や環境への有害性が問題になり、「完全除去」が提唱されてきました。
しかし、アスベストが設置されている場所は、そう簡単に除去できる部分だけとは限りません。
学校や病院を代表とする、公的施設の天井裏やエレベーターシャフト内、狭いパイプスペースなど、アスベスト対策をする上で作業が困難な場所、手が入るだけでやっとと言った狭い場所は無数にあり、それは対策されないまま放置されているのが現状です。

仮に天井裏の除去作業を行うとすれば、まずそこに人々がアスベスト被爆することのない環境を整備し、作業をするために、天井についた照明器具を始め、様々な設備を一旦外し、足場を確保しなければなりません。 アスベストを除去するとなれば、作業中に目に見えない微量のアスベストが大量・広範囲に飛散します。それらは非常に軽いため、完全に床に沈殿し、人が生活を再開し吸引する危険性のない状態にするまでに、たいへんな時間がかかります。アスベストの繊維は簡単に目に見えるものばかりではありませんので、常に心配が残ります。
加えて、アスベストを除去してしまえば、本来アスベストがその役割を担っていた、建物の耐火・防火などを別の施策で補わなければならなくなります。
アスベストを除去するという目的のためだけに、そこまでの時間と労力、コストをかけることは、大変に非効率でムダの多いことだと私たちは考えます。